懲役を終えて、刑務所を出てくる花形敬(陣内孝則)を待つ安藤昇(岩城晃一)が
花形の母親(加藤治子)に尋ね、安藤が、男は勝つだけがすべてではないことを諭すセリフです。
男の子をもつ親は、強い子になることを望み、そう云いつつ育てているのではないでしょうか。
逆に女の子をもつ親(筆者もそうですが)は、女らしくやさしく、とか他人に親切にとか、
でしょうか。
確かに永い人生を生きてゆくうちには、勝つことばかりではありません。当然負けることもあります。
たとえば、成績が及ばず、希望していた学校に入学できない、会社に就職できない等々、いろいろあるでしょう。人生、そんなに思うようにゆかないものです。しかし、そのとき、挫折しない性格、負けの中での生き方も伝えることが大切です。
本作は、梶間俊一監督が前作「ちょうちん」の好評を受けて、作られました。
原作は、本田靖春のノンフィクション「疵 花形敬とその時代」です。
前作の原作・脚本は、金子正次だったため、比較的軽いタッチでした(しかし、よい作品でした)が、本作は実話ということもあり、なかなか硬質な作品になっており、前作とは雰囲気も異なります。
主人公の花形敬は、俳優でもあった安藤昇が戦後の闇市の渋谷で創設した安藤組の幹部になり、その性分から組織になじめず、殺害されます。ストーリーは、そこまでの経緯を幼少時からの親友である松田(ジョニー大倉)との関係を軸に展開します。
ちなみに花形敬は、本作以前にも、「安藤組外伝 人斬り舎弟」(1974 監督 中島貞夫)で菅原文太が演じています。
また、本作後には、山下真司(「修羅場の人間学」1993 監督 梶間俊一)、哀川翔(「実録・安藤組外伝 餓狼の掟」2002 監督 梶間俊一)とさまざまな俳優により演じられています。
演じる俳優により、ずいぶん雰囲気も変わるものです。
ネオチンピラシリーズは、この後、名作「さらば愛しのやくざ」へと繋がってゆきます。 |